あなたとのこい

それは、いつかの記憶。

私は、零れ落ちた言葉を掬い上げる手立てを知らなかった。


『   』


その言葉だけを胸に、今日も私は歩いていく。

生きていく。


例え、隣にあなたがいなくても。





「また泣いてんの?」
「うるさい」


ニヤッと口角を吊り上げて笑うその顔が大好きだった。


「泣き虫ー」


口と態度は悪いけれど、私にとってはそれすらも愛しかった。
この何とも云えない距離が、心地良かった。


触れることの許されない、この距離がもどかしかった。






そして、別れは突然やってくる。






「呆気ないね、別れなんて」
「何、泣いてくれないの?」
「誰が泣くもんですか。泣いてやるもんか」
「意地っ張り」
「うるさい」
「…最後くらい、笑ってよ。素直になってよ」
「何がサイゴ…」


その時、初めてあなたの切ない顔を見た。



ああ、私達はどうして出逢ってしまったのだろう。

出逢わなければ、こんな苦しみを味わうことは無かったのに。


「…時間切れ、みたい」
「…そう…」
「…ねぇ」



お願い、そんな切ない声で呼ばないで。


お願い、そんな瞳で見つめないで。




お願い、お願い、お願い。





あなたに触れてしまいたくなるから…。




「さいごに、さわっても、いい…?」



涙が、私を支配した。






私達は、決して交わることの許されない存在。


私達は、決して叶うことの許されない恋をしてしまった。



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